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📘 第2回「建築日和」 【大規模修繕の進め方】

劣化診断から竣工までの流れを解説

 

🏢 大規模修繕を始めるきっかけ

「そろそろ大規模修繕の時期では?」と考えるのは、

  • 1215年を迎えたとき
  • 雨漏りや外壁のひび割れなど不具合が見つかったとき
  • 修繕積立金の見直しをしたとき

といったケースが多いです。
しかし、「どこから手をつければいいのか分からない」という声が管理組合さんからよく聞かれます。

そこで今回は、大規模修繕を実際に進める流れを、6つのステップに分けて解説します。

 

大規模修繕の流れ(6ステップ)

1. 劣化診断の実施
2. 修繕計画の立案
3. 
住民説明会と合意形成

4. 施工会社の選定
5. 工事実施
6. 竣工検査・アフター対応

 

劣化診断の実施

最初のステップは「現状を知ること」です。
 建物の劣化診断には以下の方法があります。

診断方法     内  容   メリット
目視調査 外壁・屋上・共用部を目視で確認 簡易的に実施可能
打診調査 タイルを打診棒で叩いて浮きや剥離を調べる 外壁落下事故を防げる
赤外線調査 赤外線カメラでタイルの浮きを確認 非接触で効率的
設備調査 給排水管、電気設備などを点検 見えない部分の劣化を把握

👉 専門家による診断を行うことで、「今すぐ必要な工事」と「将来の工事」を分けて計画できます。遅すぎると劣化が進み、早すぎると不必要な出費となることもあります。

 

修繕計画の立案

診断結果をもとに、どの工事を、いつ、どの程度行うかをまとめた「修繕計画」を立てます。

  • 外壁、防水、鉄部塗装を中心とした一次修繕
  • 設備更新を含む二次修繕
  • 将来の耐震補強やエレベーター改修

さらに、修繕積立金とのバランスを考慮し、長期修繕計画(30年程度の見通し)を整備するのが理想です。

 

住民説明会と合意形成

大規模修繕は費用が大きく、数千万円〜1億円規模に達することも珍しくありません。
そのため、管理組合での合意形成が不可欠です。

  • 修繕委員会の設置: 理事会だけでなく住民有志も参加すると理解が深まる
  • 説明会の開催: 工事の必要性、費用、工期を分かりやすく説明
  • 反対意見への対応: 費用負担や工事中の不便さに配慮した丁寧な説明が重要

👉東京都や埼玉県を含む関東圏特有の問題点の一つとして、住人が多国籍になり、言語や習慣の違いから修繕の説明や必要性が伝わりにくいことが挙げられます。

 

施工会社の選定

施工会社選びは工事の成否を左右します。主な発注方式は2つ。

 発注方式       特  徴   向いているケース
設計監理方式 設計事務所が計画を立て、工事監理も担当。施工は別会社。 公平性を重視したい場合
責任施工方式 施工会社が調査・設計・工事を一括して担当。 スピード感を重視したい場合

👉 複数社に見積を依頼し、費用だけでなく工事内容・アフター対応・施工実績を比較することが大切です。トラブルを防ぐためにも、信頼のおける会社に依頼することが肝心です。

 

工事実施

実際の工事はマンションの規模・状態にもよりますが、通常36か月程度かかります。

  • 足場設置:安全対策を最優先に進める
  • 外壁補修・防水工事:建物全体の耐久性を高める
  • 鉄部塗装・共用部改修:美観や利便性を向上
  • 安全管理:騒音・臭気・共用部利用制限への配慮

👉 居住者に負担をかけない工事運営が、管理会社・施工会社の腕の見せ所です。

 

竣工検査・アフター対応

工事が完了したら竣工検査を行い、契約通りの品質が確保されているか確認します。

  • 第三者検査を導入する管理組合も増加
  • 施工会社による保証制度(510年が多い)
  • 定期点検(1年後・2年後)で不具合をフォロー

👉 「工事完了=終わり」ではなく、竣工後のサポート体制も重要です。

 

 

💰 費用感と資金繰り

  • 中規模マンション(50戸前後)の場合:4,000万〜6,000万円
  • 給排水管やエレベーター更新を含む場合:1億円以上

資金不足の場合は、

  • 修繕積立金の増額
  • 一時金徴収
  • 金融機関からの借入

といった選択肢があります。

 

まとめ

大規模修繕を成功させるポイント

1. 専門家による劣化診断で現状を正確に把握
2. 
長期的な修繕計画を立てる
3. 
住民合意をしっかり形成
4. 
信頼できる施工会社を選定
5. 
工事中の安全・住民配慮を徹底
6. 
竣工後のアフターサービスも重視

次回(第3回)は、特に関心の高いテーマである「大規模修繕の費用と資金計画」を解説します。

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